アニメな半生記 → 現役アニメーター時代編

2・アニメーターの仕事って?

 「アニメーター」と一言で言っても「原画マン」と「動画マン」に分かれる。更に厳密に言えば、「作画監督」や「動画チェッカー」という役職もある。これは三十分番組で言えば三千枚ほどの動画をいかに早く、統一した絵柄で描き上げるかを追求することでシステムが出来、そこから生まれた役職だと言える。

 そもそも「アニメーション」と言うのは何なのか、ということに今まで触れずにきたので、一旦、私のことは横に置き、少々アニメーションについて語ってみよう。

アニメーションは、被写体が何であれ、コマ撮りして作った映像全般を言う。粘土(クレイ)であれ、人形(パペット)であれ、何かの物体(オブジェ)であれ、描いた絵であれ、コマ撮りしたものであれば全てアニメーションなのだ。もちろん、コンピュータによる2D,3Dのグラフィックも含まれる。もともとは映画のトリック撮影の手法だったものが独立した一つのジャンルになったものだと考えて良いだろう。つまり、現在主流のセルアニメは、幅広い制作方法を持つアニメの中の一つの手法にすぎないのだ。

では、どうしてセルアニメが主流になったのだろうか。大きな理由のひとつとしては、動く部分を透明なフィルムシートであるセルに描くことで動画、背景、彩色の作業分担が可能になり、合理的な制作システムができあがったからである。もうひとつの理由としては、セルの裏側から絵の具を塗ることによって塗りむらのない均質なペイント作業が行なえるようになり、塗る人の個性が出なくなったために、彩色作業自体が多人数によってできるようになったからである。作業がデジタル化された今もその理由に変わりはない。

更に言えば、作画監督システム、もしくはキャラクター担当システムによって、絵柄の面でも統一をすることが可能となり、多くのアニメーターによる作業が可能になったのも見逃せない理由のひとつである。量産できるという事は商業ベースに乗せやすいということであり、必然的にセルアニメシステムによる作品の需要が増え、アニメ制作手法の主流を占めるようになったのだ。

さて、アニメーターに話を戻そう。

アニメーションが動いて見えるのは、原理的にはノートなどの端に描くパラパラマンガと全く同じだ。少しずつ違った絵が、連続して一コマ一コマ瞬間的に目の前に映し出されることによって目の網膜に残像現象が起こり、動いて見えるのである。

パラパラマンガは順番に描いていかなければ出来ないが、セルアニメシステムによる作画では先ず、アクションの要所要所を描き、大雑把に演技を組み立てていく。

具体的に言うと、例えば椅子から立ち上がるアクションでは、先ず普通に座っているポーズ、次に座ったまま前屈みになり重心をおしりから足に移したポーズ、最後に立ち上がったポーズの3枚を描くことになる。このようなアクション上のピークポイントとなるポーズをキーポーズと言い、それを絵にしたものを原画と言い、そしてその原画を描くアニメーターのことを原画マンと言うのだ。

もちろん原画だけではまともに動かない。それらを自然に繋いでいく絵が必要となる。原画と原画の間に何枚の絵を入れるのかは、動かすスピードによって決まる。枚数が多く入れば入るほどスピードは遅くなっていく。また、一枚の絵を何コマで撮影するのかも重要なことだ。

少し複雑な話になるが、映画の世界では一秒間の映像は二十四のコマ(フレーム)が連続して映し出されることで自然に動いて見える。アニメーションでは一秒のために二十四枚の絵を描くのは大変なので、一般に同じ絵を二コマないし三コマずつ撮影することで一秒間の動きに必要な枚数を省いて八枚ないし十二枚にしている。

 日本のアニメは一秒間の動きに八枚の動画を使う三コマ撮りが主流となっているがアクション内容によってはそれではもたついてしまうため、部分的に二コマや一コマを使うこともある。また、間に入れる絵も均等間隔で描き入れるのではなく、どちらかに寄せたり間を極端に開けたりすることで動きにめりはりを出すことができる。そうすることを「寄せ」とか「詰め」と言う。中枚数やコマ数をタイムシートと言う撮影用の伝票に書き込み、軌道や寄せ等の指示を原画に記入するのは原画マンの仕事であり、描かれた原画は演出家と作画監督のチェックを経て動画マンに回される。

動画マンとは、原画と原画の間に絵を描き込んでアクションを完成させるアニメーターのことだ。

三十分のテレビ番組の場合、その一回の放映分の中で複数の原画マンが作画を担当するので、いかにキャラクターの設定があっても原画マンの癖が微妙に出てしまう。また、新人の原画マンだと描いた原画がデッサン的に未熟なこともある。このような原画の上に修整用紙という色のついた薄紙を乗せて修整したい部分を描いていくのが作画監督、通称「作監」の仕事だ。

 動画マンは先ず、作監の描いた修整を優先させながら原画の清書をする。この作業のことを日本ではクリンナップと言う。次に、原画やタイムシートに書かれた指示に従い原画と原画の間にそれらを繋ぐ絵を描き入れていく。この作業のことを中割りという。中割りされた絵のことを動画と言うのだが、原画、動画を括って広い意味で動画と言うこともある。

 描きあがった動画は動画チェッカーによってチェックされる。専門職として動画チェッカーを置く場合もあるが、ベテランの動画マンや新人の原画マンが兼務する場合もある。動画チェッカーは動画の不備に応じてやり直しを命じたり、自分で直してしまったりする。アニメの現場ではこのやり直しのことは「リテーク」と呼ばれ、どのセクションのスタッフからも恐れられている。リテーク作業は一銭のお金にもならないからだ。

 さて、アニメーターを目指して勉強してきた人はアニメスタジオに就職すると最初は動画マンとして仕事をすることになる。一年から二、三年の経験を積んで実力の認められた者から原画マンに昇格していくと言うのが一般的な道筋だが、その間に動画チェッカーを命じられることもある。

次に、私自身の動画マン時代、動画チェッカー体験、原画マン時代、そして作画監督の頃の思い出を綴っていきたいと思う。

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