アニメな世界事情
フランス

アートな漫画「バンド・デシネ」というコミック文化を持ちアニメにおいては『王様と鳥(旧題・やぶにらみの暴君)』という古典的名作を持つアートな国フランスだが、実は現在、ヨーロッパで最も日本の漫画が売れている国である。『ドラゴンボール』を知らないフランス人はいないとも言われている。

アニメにおいては一九七八年に日本のアニメ『UFOロボ・グレンダイザー』(右写真)が『ゴルドラック』というタイトルで大ヒットした。放送三ヶ月でなんと視聴率百%を達成し、その後も平均視聴率六十〜七十%という驚異的な数値をたたき出し社会現象となった。放送時間の夕方になると外で遊ぶ子供が消えたと言われている。

その後フランスおける日本アニメの放映は、キャンディキャンディ』『宇宙海賊キャプテンハーロックと続いていくのだが、当時これらのアニメを夢中で見ていたフランスのチビっ子達は、日本で制作されたアニメとは知らずにいた。なぜなら、キャラクター達は皆、カタカナの名前、西洋人の風貌をしていたからである

日本のアニメは安くて視聴率がかせげたため、それ以降、怒涛の進出が始まったが、必ず反動というものはあるもので、文化的な摩擦から「日本のアニメは残虐だ」という批判が徐々に高まっていった。

『キン肉マン』における主人公の仲間、ブロッケンジュニア(左写真)がナチスドイツをモチーフにしていたために、ヨーロッパのナイーブな事情から批判の声があがった。そして、ついには放送停止勧告を受ける事態に発展し、一九九〇年代初頭から日本のアニメはフランスのテレビからぱったりと姿を消してしまったのである。日本のアニメが放送を再開したのは一九九九年の『ポケモン』からであり、それ以降は再び怒涛の進出ぶりが復活している。

しかし、日本のアニメを拒否していた期間にフランスは自国のアニメ製作に力を入れるようになっていた。初めのうちはレベルも評判も低く日本のアニメには及びもしなかったが、日本のアニメ製作を学ぶ機運の中で次第にヒット作も生まれてきた。

二〇〇四年にはなんと製作費四十億円のフル3DCGアニメ『ケイナ』(右写真)が完成し世界に打って出た。この作品はナムコによってPS2対応のゲームにもなっている。

『ケイナ』を作ったクリス・デラポート監督は大友克洋の『AKIRA』に衝撃を受けてアニメを志したという大の日本アニメファンである。フランスのアニメ誕生のきっかけの背景には、色々な意味で日本アニメがあったのだ。

また、日本のアニメが消えてしまっていた期間、フランスの日本ファンは、その渇望感からか日本の漫画を読むようになり、九〇年には流通会社が日本の漫画を輸入するようになった。フランスは今や、ヨーロッパでもっとも日本の漫画読者の多い国になっており『ドラゴンボール』や『NARUTO』などが良く売れている。

フランスには日本オタクが多数いるにも関わらず、日本のアニメの放映本数は現状では意外に少ない。それはフランスが、海外の番組の放映などについて規制をしているからだ。この規制により、フランスでは放映されるアニメの六〇%以上がEU製であること、その内五〇%以上がフランス製であることを義務づけられているため日本のアニメの参入が難しくなっている各国で人気の『クレヨンしんちゃん』はフランス人の倫理観に合わないようだ。しんちゃん本人もさることながら、ヒステリックな母親と、若い女性に過剰な関心を示す父親が出てくるストーリーは多数の視聴者を抱える地上波での売り込みは難しい。

二〇〇七年に名古屋で開催された「コスプレサミット」では来日したフランス人のペア(左写真)が見事に優勝するなど、フランス人の日本熱、オタク熱は年々高まっている。フランス各地でもオタク系イベントは盛んであり、日本の漫画やアニメの情報を主としたオタク系雑誌も多数出版されている。パリの郊外に住む十六歳の二人の少女が家出をし、漫画の国、憧れの桃源郷である日本に向けて出発したものの、ポーランドで保護されたというニュースがあるくらいである。

さて劇場アニメはどうだろうか。フランスでは宮崎アニメの人気は非常に高い。もともとフランス人はアニメ好きなのである。フランスでは休暇には子供たちを劇場に連れて行くという習慣があり、ディズニーアニメや宮崎アニメのように良質のストーリーを持ったアニメは歓迎されるのだ。一方『ポケモン』のようにテレビから派生したような劇場作品の人気は低い。

フランスも負けてはいない。『ルネッサンス』という作品が二〇〇六年に一般公開された。フランス、イギリス、ルクセンブルクの欧州3国合作で、総製作費は23億円という大作だ。フランスの若き秀才クリスチャン=ヴォルクマン氏が監督・デザイン原案を務め、氏にとって初の長編作品となる。欧米の雑誌は、以下のように同作を賞賛する

「フランスのアニメーションの新時代を切り拓いた!」(A誌)
「ぶっ飛んだ才能が開花した記念すべき傑作!」(B誌)
「アクションと繊細なグラフィックのベルが融合した本作は必見!」(C誌)

タイトル通り、フランスのアニメ業界のルネッサンス的作品となりうるのか。次にどう繋がっていくのかが注目される。

 フランスでのアニメ教育に関しては国立ゴブラン専門学校が多くの人材を輩出している。同校にアニメーション学科が開設されたのは一九七六年だが、それ以来、手描きからデジタルまでの徹底した教育が行われている。フランスのアニメスタジオに行けばどこにでも同校の卒業生がいるし、卒業生からは優れたアニメ作家も多数生まれている。

何と言ってもフランスはアートの国である。フランスを代表するアニメーション作家の1人、ジャン=フランソワ・ラギオニの短編作品集(右写真)などは日本でも購入できる。ぜひとも機会を見つけてフレンチアートアニメの真髄に触れてほしい。

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