アニメな半生記 → 現役アニメーター時代編

12・作画監督はつらいよ

『魔法使いサリー』が終わる頃、会社側から次の仕事の打診があった。新番組の作画監督としてどちらかの作品を選んでくれと言うのだ。ひとつは『キン肉マン2』、そしてもう一つは『ドラゴンクエスト・ダイの大冒険』だった。それまで、丸っこいキャラクターや魔法少女ものばかりやってきた私にとって、アクションアニメは苦手分野ではあったが、逆に挑戦し、開拓してみたい新天地でもあった。

『キン肉マン』は一作目の頃から楽しみにみて観ていた作品だったが、絵柄的に描きたいと思えるものではなかった。『ダイの大冒険』は当時、少年ジャンプに連載中の人気マンガだったが、私は一度も読んだことがなかった。さっそく目を通してみると、絵柄的にとてもしっくりくるものがあったので、ほとんど迷うことなく、こちらを選ぶことにした。

 『ダイの大冒険』は一九九一年の十月からの一年間、放映された作品だ。 その間に二本の劇場用作品も作られた。アニメーター生活の中で最も悔いを残しているのは劇場用の二作品目の時、作画監督の要請を断ってしまったことだ。テレビシリーズの方で悪戦苦闘していたので劇場という大任を果す自信がなかったのだが、今にして思えばチャレンジしておけば良かったと悔やまれてならない。

 テレビシリーズの『ダイの大冒険』は当初、『ドラゴンボール』並の長寿番組になるだろうと言われており、視聴率も結構良かったのだが、テレビ局の都合で中途半端な打ち切りを余儀なくされてしまった。少年ジャンプでの連載も好評に続いていた最中だったので、視聴者にもかなり不満を残した強引な最終回となってしまった。ただし、もし長寿番組になっていたならば、私は専門学校の講師にならなかったろうし、これもまた個人的には運命の大きな流れだったのだと思っている。

 この作品では、激しいアクションや爆発など、それまであまりやったことのない動きの作画が頻繁に求められた。爆発については、いろいろな作品の爆発シーンをビデオでコマ送りしながら、かなり研究した。モンスターのモブ(群集)シーンや、ものすごい鎧兜を身に付けたキャラクターなど、線の多いカットが沢山あり、アッコやサリーの頃のようにポンポンと仕事は上がらない。それでもカットあたりの単価や作画監督手当ては同じなのだ。そこがアニメの辛いところである。

 他の班の作画監督の人達は歴戦のベテランばかりだったので、自分の担当話が見劣りしないよう、必死で努力した。私についた原画マンは皆、フリーだったりアウトプロのスタッフだったりしたので作画打ち合わせの時にしか顔を合わせることはできなかった。通常3人くらいが付き、私を含め4人で原画を分担したのである。
 その中で、サリーの頃から一緒に仕事をやってきた兼業主婦アニメーターのMさんは気心が知れていた。地味で控えめな方でしたが、意外にも迫力のある原画を描いてくれたのでとても助かった。

 それにひきかえ、某プロのS君の原画はひどいものだった。線がよれよれでミミズが這っているよう。デッサン狂いの上、キャラクター崩れが激しく、アクション的にも評価できるところはなかった。いちから原画を描くような作監修整をしなければならないのだ。

 作画監督をする場合、どのような原画陣と組むかで苦労の度合いは全く違ってくる。アニメーターとしての実力が自分より上の人がついてくれたりすると嬉しいものがある。絵柄の統一の為に、作監として修整はするが、部分的なもので済むし、何と言ってもレイアウトやポーズ、そしてアクションから、逆に多くを学ばせてもらえるのだ。結果として、仕事がはかどるばかりか、出来上がった作品のレベルも高くなり、作画面での責任者として、いい評価を得ることができる。

 それとは逆に力不足の原画マンが付いた場合、作監はその尻拭いに終始することになる。絵を直すのに精一杯で、演技にまで手を入れる余裕が持てず、結局は絵柄だけはかろうじて統一されたレベルの低い作品になってしまうのだ。しかし、その評価は作画監督が甘受していくしかないのである。

『ダイの大冒険』では棚に積まれていくカット袋を取って担当原画マンの名前を見るたびに、ほっとしたりがっかりしたりの連続だった。いずれにしても『ダイの大冒険』は私にとって、アニメーターとして大いに勉強になった作品であるとともに、十四年間のアニメーター歴の中で代表作と言える作品になった。それだけに、打ち切りが決まった時は残念で仕方がなかった。その気持ちの中には、次の仕事はどうなるのだろうかと言う不安もあったが、作品に対する愛着にすこぶる強いものがあったのである。






左の資料はアニメージュ1991年11月号のテレビアニメーションワールドに載ったスタッフリストです。
演出の葛西さんにはお世話になりました。


このアニメージュの巻末に次号予告として面白い内容がありましたのでついでにのせておきます。
さあ、この「待望の新作」とは何でしょうか?

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